その闇に手を伸ばせば必ず握り返してくれるだろう
【屍鬼】の装丁はとても美しいと思いませんか?藤田新策氏のイラストに魅了されて手に取った小説はたくさんあります。小説以外でもこの方の絵を見かけることがあるので、ホラー愛好者あるある~なのかも知れませんね。sirenシリーズもパッケージ買いして嵌まったんだよね~。湿度ムンムンの色彩が堪らないんだわコレが。
湿り気をたらふく含んだ暗黒がそこには在る。身動きしてはいけないよ、ほぅら誰かさんに見つかった。振り向いてはいけないよ、君が逃げたその先で大きく大きく、腕を広げて待ち構えているのだから───。
ポエム楽しすぎんか。
たっぷりと、芳しい珈琲を豪奢なカップに注ぎ入れる。来客をもてなす支度に余念がない小さな手の持ち主は、その芳醇な香りに心を動かされることは微塵もない。幼くして屍鬼と成った彼女には、珈琲の味わいを堪能する時間は神に与えられなかったのだ。桐敷沙子はもっとも永く生き続けてきた屍鬼の一人であり、この外場村に完成しつつある彼女らの拠点において、絶対的な権威を持つ首領といっても差し支えないだろう。今日は首領らしく目下の者に説教を垂れようというわけだ。客の名前は武藤徹───友人を自らの牙にかけたことを悔やんで自暴自棄に陥っているらしい。沙子はカップの中の黒い液体に映る蒼白い顔を見つめながら思考する。不穏分子を放置すればいつか必ず崩壊を招くだろう。彼が自分の言葉に耳を塞ぐのなら、辰巳にお願いして言い聞かせなければならない…。
私は懇懇と諭した…。私達にとって人の血を飲むことはごく当たり前の行為なのだと。人を襲うことに躊躇したり申し訳なく思ったりしなくても良いのだと。家畜の悲鳴に耳を傾ける必要は少しも無いのだと…。彼、武藤徹は激しく動揺していた。何より友人───結城夏野と言ったか───や家族を害してまで永らえ続けることが地獄の業火に焼かれるが如く自身を苛むのだとがなり立てた。私は頭の芯から冷えていく感覚を暫くぶりに思い出したように錯覚した。犠牲なくして生き続けることは屍鬼には選べない。だから生きることは辛いことなのだ。呆れるくらい大勢の人々を襲って血を啜って殺してきたの。私は死にたくなかったから───。笑えるでしょう?あんなにたくさんの人達を殺しておいて、私は自分が死ぬことが怖いの。あなただってそうでしょう───?いつの間にか武藤徹は静かに話を聞いていた。─────理解ってくれたとは思わない。彼が憐憫の眼差しを自分に向けていた事実に思い至る。冷めてしまった珈琲は後で辰巳か正志郎に飲んでもらおう。沙子は愛読書を手に取った。
もともと沙子ちゃんはロリコ…屍鬼(当時は違う名称だろう)に襲われて蘇ってしまった不幸な犠牲者だったわけで、死にたくないからご飯食べてただけなんだよね。悪いのは古のロリコンでしょー⁉️…だけど寂しいからって仲間を増やしてジャンジャンバリバリ🎵人殺しを続けたら、そりゃあ破綻するわ。桐敷さんファミリーだけで満足して、ひっそりと暮らしていたら良かったのに…。身内に甘い一面が見え隠れしてて可愛いよね。家族ごっこなのに家族皆を大切にしている寂しがりだから、身内に足元を掬われちゃうんだけど結局許してしまうんだろうねぇ。人外となった自分達の存在を受け入れてくれた桐敷正志郎には滅法甘々なのも不憫可愛い。あ、正志郎さんは見事に歪んだ人間だと思います、はい。
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